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             春から秋の暖かい季節は、野鳥や昆虫、動植物などの自然と気軽に触れ合える季節です。その反面、
            毒を持つ、あるいは咬みつくなど多少注意を要する生きものたちの活動も活発な時期でもあります。
            それらの生きもの中で、野外で出合う機会が多い生きものと、その対処方法などを紹介します。

              
自然に対するマナーを守り、生きものたちへの配慮も忘れずに、できるだけ敵対することなく、より
            安全に楽しく活動したいですね。

内容
●ムカデの仲間
●スズメバチの仲間
●ガの仲間
●ヘビの仲間
●ハゼノキの仲間

★これらの生きものの昔からの活用方法

★お願い


●ムカデの仲間

朽木や落ち葉の下などにすみ、主に夜活動して昆虫などを食べます。毒牙を持ち、人が触れると身を守る為に咬みつくことがあります。咬まれると激痛があり、赤く腫れ、痛みが1週間以上続く場合や、発熱する場合もありますが、命に関わる事はありません。
 ムカデの毒成分はヒスタミンや活性ペプチドなどですから、咬まれた際には応急処置として、抗ヒスタミン剤含有のステロイド軟膏(注意1)を塗って下さい。腫れがひどい時は冷水や濡れタオルなどで傷口付近を冷やし、場合によっては医師の治療を受けて下さい。


トビズムカデ


トビズムカデ


トビズムカデがヤマミミズを捕食

●スズメバチの仲間

スズメバチの仲間には、攻撃的なものもおり、特にオオスズメバチは、毒が強く攻撃性も最も強いため恐れられています。また、スズメバチの事故で最も被害が多いのは、キイロスズメバチです。
 巣を発見した際には刺激せず、できるだけ静かに離れて下さい。巣を守るために攻撃してくる事があり、人間などが近づくと、カチカチという音を立てて威嚇します。巣のない場所で単独で飛んできた場合は、おどしや攻撃ではないので、追い払うなどの行動は避け、じっとする事が大切です。動かずにいると飛び去ります。急に動くと、攻撃を受けたと判断して襲ってくる場合があります。また、黒いものをめがけて攻撃する習性もあります。  刺された際の応急処置は、その場からできるだけ遠くへ静かに移動し、最初に水でよく洗います。ハチの毒は水に溶けやすいので、傷口をつまんで毒液を搾り出しながら洗うと効果的です(注意2)。その後、抗ヒスタミン剤含有のステロイド軟膏(注意1)を塗って、冷水や濡れタオルなどで傷口付近を冷やして下さい。もし、吐き気・下痢・ジンマシン・呼吸困難・全身の浮腫みなどの全身症状が出た場合は、抗ヒスタミン剤かステロイド剤を服用し、早急に医師の治療を受けて下さい。   


オオスズメバチ


スズメバチの仲間


スズメバチの仲間の巣

●ガの仲間

全てのガの仲間が有毒のようなイメージがあるかもしれませんが、毒を持つものはごく一部です。しかし、見た目の毒々しさと毒を持つか持たないかはあまり関係がないので、見た目だけで判断するのは危険です。種類によって姿が違うので、有毒なものは特徴を覚えておくことが大切です。イラガの仲間(例えばイラガ・アオイラガ)やカレハガの仲間(例えばマツカレハ・タケカレハ)などは幼虫の時に、ドクガの仲間(例えばチャドクガ・モンシロドクガ)は一生を通して毒毛や毒棘を持っています。
 無毒かどうかわからない場合は、触らないで下さい。触らない事が一番の予防です。長袖シャツ・長ズボンなどを着用して肌の露出を避けて下さい。
 刺された際の応急処置は、粘着テープやピンセットで毒毛などを取り除いた後、患部を水でよく洗って下さい。痛みや炎症が起きた場合は、抗ヒスタミン剤含有のステロイド軟膏(注意1)を塗って下さい。絶対に患部をこすってはいけません。毒毛などが目に入った場合は、こすらずに水で洗い流し、眼科で治療を受けて下さい。


イラガの幼虫


タケカレハの幼虫


ドクガの幼虫

●ヘビの仲間

マムシとヤマカガシについて紹介します。

保護色をしている為、野外では気付きにくいので、ヘビが出そうな草地・やぶ林の中などを歩く際には、「長靴を履く・歩く前に棒などでヘビがいないか確認する」などの対策が必要です。また、岩の間や倒木の陰に潜む場合も多く、その中にむやみに手を突っ込むのは危険です。見かけても「不用意に近づく・踏む・つかむ」などをしなければ、まず攻撃されません。
 咬まれたのがマムシの場合、咬むと一旦放しますが、そのままでいるとまた攻撃してくるので、咬まれたらすぐにヘビから離れ、そのヘビの特徴を確認して下さい。慌てず、咬まれた部分を動かさないようにして、早急に病院へ行って下さい。ドキドキすると血液の循環が速くなり、毒の回りも速くなります。

・マムシ
 頭部は長めの三角形でやや大きく、体に大きな銭型斑紋があり、体色は黒から赤っぽいものまで変異があります。主に夜活動しますが、雨や曇の日には日中でも活動します。平地から山地にいて、やぶ・林内・林縁の草地、岩の間や倒木の陰などにひそんでいます。毒は強いが注入量は少なく、それほど回りも速くないので、死亡例は非常に少ないようですが、顔や首を咬まれた場合は致命傷になることがあるようです。

・ヤマカガシ
 体色はオリーブ色で、黒褐色や緑色の模様があり、前のほうに赤い斑紋が目立つ個体が多いですが、個体差が大きいのも特徴です。平地の水田や水辺、谷筋などの湿った場所を好みます。奥歯で深く咬まれない限り、咬まれても毒が入らないことの方が多いようです。しかし、不注意に首をつまんだりすると、首筋の後ろにある2列の毒腺から毒液をピュッと飛ばすことがあります。飛ばされた毒液が目に入った場合は、すぐに流水で洗い流し、眼科で治療を受けて下さい。


マムシ


マムシ


ヤマカガシ

●ハゼノキの仲間

山野に生える落葉樹です。枝先に集まった、細長い卵型のような葉が特徴で、秋になると紅葉します。ウルシオールを含み、全ての人が必ずかぶれるわけではありませんが、樹液に触れたり、時には雨の日に下を通ったりすると皮膚炎を起こすことがあります。皮膚が弱い方は、近くを通っただけでかぶれることもあります。帽子・長袖シャツ・手袋などを着用して肌の露出を避け、近づかないようにして下さい。

かぶれた際の応急処置は、患部を水洗いし、抗ヒスタミン剤含有のステロイド軟膏(注意1)を塗り、冷水や濡れタオルなどで冷やして下さい。ハゼノキの仲間に触れた手や、患部に触れた手で他の場所を触ると、かぶれが広がるので注意が必要です。かぶれがひどい場合は、かぶれた原因を確認し、皮膚科で治療を受けて下さい。


ハゼノキ


ヤマウルシ


ヌルデ
注意1) 抗ヒスタミン剤やステロイドを使用する場合には、アレルギーが発生する可能性について確認し、十分注意して    下さい。
注意2)今回の応急処置の中では紹介していませんが、ヘビやハチなどの毒を傷口から吸出す道具として、ポイズン・     リムーバ(毒成分吸引器)という道具があります。注射器のようなもので、毒を吸出す仕組みになっていて、患部    の大きさによって吸出し口を変えることができます



★これらの生きものの昔からの活用方法を紹介します。
 
   紹介した注意を要する生きものは、一方では、我々の生活の中で利用されてきたことも理解して下さい。
◆ムカデの仲間

小さな生きものを捕食するので、害虫を食べる益虫とされている他、ムカデを漬け込んだサラダ油などは、火傷や怪我などに塗る薬として利用されています。

◆スズメバチの仲間

滋養強壮などの効果があるとして、幼虫は珍味として食べられ、成虫は焼酎などに漬け込んで利用されています。

◆ガの仲間のイラガ

イラガの繭は、スズメノショウベンタゴ・スズメノテッポウなどと呼ばれて親しまれている他、玉虫という呼び名で、繭の中の幼虫が釣り餌に利用されています。

◆ヘビの仲間のマムシ

滋養強壮などの効果があるとして、焼酎になどに漬け込んで利用される他、高級食材やスタミナ食品として食べられています。

◆ハゼノキの仲間

・ハゼノキ
 果皮からとったロウは、和ロウソクの材料になります。

・ウルシ
 傷付けた幹から漆液をとり、漆の原料となる他、果皮からはロウが取れます。

・ヌルデ
 実の回りの白い粉は少し塩辛く、塩の少なかった昔は塩代わりに利用されていました。また、葉にできた虫こぶ(五倍子:ごばいし)には、タンニンが多く含まれており、御歯(おはぐろ)(※)の材料にされていました。
※御歯黒とは、歯を黒く染めることです。室町時代には女子9歳の頃これを成年の印とし、江戸時代には既婚女性を意味しました。また、虫歯の予防効果もあったようです。


   ★お願い
     私たちが、今までの観察会等で得た経験と文献から、注意を要する生きものに関して、まとめました。
     この他に「こういった生きものに注意した方がいいよ」あるいは「こういった経験をしました」など、今後の
     自然観察会や探鳥会において、参考になる情報や写真をお持ちでしたら、御一報頂ければ参考にしたいと思います。

これらの情報は、安全に自然と親しんで頂くために、ナイス福岡の会員が協力して作成しました。他の目的による転用はご遠慮下さい。
また、特に写真は提供者が知的情報財産権を有しますので、二次利用の場合はナイス福岡を通じて所有者への許可が不可欠となります。

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